ムカデを殺してはいけない理由は?仲間を呼ぶ噂の真相と安全な退治法 - 複眼インデックス
民間伝承の中でも特に広く信じられているのが、「ムカデを叩き潰すとフェロモンで仲間を呼ぶ」「1匹見かけたら必ず近くにつがい(もう1匹)がいる」という言説です。害虫防除の専門機関や昆虫生態学の調査データをもとに、この都市伝説の真偽を検証します。
結論から述べると、ムカデが「仲間に危険を知らせて呼び寄せる警報フェロモン」を放つという説は、科学的には明確な誤解です。アリやハチなどの高度な社会性昆虫とは異なり、ムカデは単独で生活する単体行動型の節足動物です。仲間同士で助け合う習性は一切なく、むしろ狭い空間に複数匹を閉じ込めれば激しい共食いを始めるほどです。叩き潰した瞬間にフェロモンで軍勢が押し寄せるという現象は生物学的に存在しません。
それにもかかわらず「つがいで出る」「1匹倒した直後にもう1匹現れた」という体験談が後を絶たないのは、以下の2つの明確な理由が存在するためです。
- 同条件への誘引(環境の一致):ムカデは「暗く湿気があり、ゴキブリなどの餌が豊富で、外気から身を隠せる隙間」を好みます。1匹が侵入に成功した侵入経路(窓サッシの隙間や通気口)と快適な環境は、周辺に生息する他の個体にとっても絶好の到達点となるため、時間差で同じ場所に現れる確率が必然的に高くなります。
- 繁殖期の追尾行動(5月〜6月):繁殖期を迎えると、オスはメスが分泌する性フェロモンの微弱な痕跡を追尾して移動します。この時期に限っては、先行するメスの後を追ってオスが同一ルートから屋内に侵入するケースが実際に確認されており、これが「夫婦で行動している」という迷信の原型となりました。